月夜の翡翠と貴方


…いや、怖いのは、彼自身ではない。

その深緑の奥に潜む、見たことのないルトだ。

明るい彼の印象が、強いからだ。


ルトの言葉に、男はますます眉を吊り上げた。

しかし、ルトの声は、更に低くなって。

「失せろ」

…思わず、体が震えた。

深緑が。

恐ろしく、暗い。

この男は……本当に、ルト?


男が怯み、ぱっと手を離す。

ルトは直ぐに男から離れると、私の手を掴んだ。

「行こ、ファナ」

…先程よりは、柔らかい声だった。

私も席を立ち、手を引くルトに慌ててついていく。



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