六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
指をさすと、瑛さんは途端に嫌そうな顔をした。
「……笑ってない」
「うそぉ……」
「もしそう見えたとしたら、仕事疲れによる筋肉の痙攣だ。
忘れろ」
何それ意味わかんない。
照れてるだけのくせに。
滅多に笑わないから……。
とく、とく、と心臓が早いリズムを刻む。
「帰るぞ」
「……はい」
あたしは黙って、瑛さんの後をついていった。
雨をやませるなんて、何だか大変な事をしてしまったのに。
それよりも。
瑛さんが笑った事の方が、あたしにとっては大事件だった。