鋭角の誘い【密フェチSS】

─────ただいま、と小さな声で制帽を脱ぐと玄関の靴箱の上に無造作に置いた。


「おかえりなさい！」


　三日ぶりの三津谷さんは、黒髪に指を通すと、うん、と無表情に頷いた。


　付き合いはじめて三週間。彼の部屋ではじめて彼の帰りを待っていた。

　居心地が悪くて、ずっとダイニングチェアの上で正座してたから足がピリピリ痺れてた。


　背が高い三津谷さんを下から見上げる。不動の魅惑の鋭角ラインはすぐそこだ。


「スイス、どうだった？」


「ん、いつも通りだよ。シャワー浴びてくる」


「うん」


　口数が少ない彼から、好きだ、と伝えられて舞い上がって大喜びした私だけど、本当にこの私が三津谷さんの彼女でいいのか不安になる。


　うちの職場、綺麗な人沢山いるし、それに何より国際線パイロットの三津谷さん。滞在先の各国で、沢山の美人に囲まれてそうなイメージがある。


「脱ぐ……けど？」


「あ、え、はい？　ああ、すみません！」