ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
(こないだの絵って、何だっけ)


意味がわからないまま曖昧に返事をして、背中をそっと押されるままに隣の部屋へ行く。


静物画用らしい小物がところ狭しと置いてある、広い部屋。

それを置くための、さまざまな椅子やテーブルが並んでいる。

そして、それらを照らすライティング用の大きなアームライトが3つ。

撮影用のカメラと三脚。

いつも前を通るとき、いいなぁ、こんな部屋があったらなぁ、なんてこっそり思ってた、あたしにとっては夢みたいな部屋。


黒川さんは部屋を横切って、奥の一つのカンバスを手にとった。


「まあまあよく描けたんじゃないかな」


くるりとひっくり返すと。


(わ……)


これは、あたし?


(あ、そうか。

あたし、前回はこの絵のモデルをやってたんだ……)

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