†すべてはこの夜に


私が通う聖心女学院はその名の通り女子校で、偏差値はそれ程高くないものの由緒正しく規律も厳しい、良家のお嬢様が多く通うような学校だった。


教師も年配のベテランが多く、そんななかでまだ年の若い独身の芝崎は一種のアイドルに祭り上げられているみたい。


芝崎本人もきっとそれを意識していて、過剰なまでに気さくで話のわかる良い教師を演じているように見えるのは、私がひねくれているせいだろう。




「進路のことだけど、本当に進学する気はないのか?」


やっぱり。

柴崎に呼び止められたときからなんとなく予想していた話題を切り出された。

昨日提出した進路調査を見てのことだろう。

必ず何か言われるに違いないと思っていたけど、こんなに早くリアクションがあるとは---


「はい。就職を希望します」


私は無愛想にならないよう気遣いながらもキッパリ断言する。




聖心女学院にはエレベーター式に進学できる大学があり、大半の生徒が内部進学という形を取る。

聖心女学院卒業、と言うのは将来においてブランド的な価値があるらしい。


けれど、私は高等科を卒業したら就職したいと思っていた。



---自立する

その意思表示のために。



たとえ一生鳥籠に囚わる身であったとしても…



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