スイートスキャンダル
「……ありがとう」


「いえ」


柊君はどこか嬉しそうに笑って、麦茶を飲み始めた。


あたしもペットボトルに口を付けながらも、ほとんど面識が無かった彼への借りが増えていく事に戸惑う。


「やっぱり、あんまり泳いでる人はいませんね」


不意にそんな事を言った柊君に釣られて、海岸に視線を遣る。


「そういえばそうね。こんなにいい天気なのに……」


ここに来るまでに観光客はそれなりにいたし、海の家だってオープンしている。


体感温度から考えても、もっと泳いでいる人がいても良さそうなものなのに…。


「いや、この時期はもう泳がない方がいいんですよ」


不思議に思っていると、柊君が苦笑を漏らした。


< 59 / 200 >

この作品をシェア

pagetop