スイートスキャンダル
「遥さん、決まりましたか?」


しばらくして声を掛けて来た柊君を見て、思わず小首を傾げた。


「柊君は何も買わないの?」


彼は旅館を出た時と同じだけの荷物しか持っていなくて、お土産を選んだ様子も無かった。


「俺、このまま大阪に帰るから、あんまり荷物を増やしたくなくて……」


「えっ?大阪?」


「あっ、言ってませんでした?俺、大阪に住んでるんですよ」


「そうだったんだ」


「はい。それに、今回の旅行の事は同僚達には話してないし、別にお土産はいらないかなって。でもまぁ、有紀と義兄さんには宅急便で送ろうかな」


柊君は目の前の棚に視線を遣って、有紀が好きそうな地域限定のお菓子を手に取った。


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