想 sougetu 月
 前に1度、干渉しすぎる斎に文句を言ってケンカしたことがある。

 あれは思い出したくもない記憶の1つ。

 あの時は、いつもの辛らつな言葉ではなく、私という存在を完全に無視された。

 好きな人にそこにいないかように振舞われるほど悲しく辛いことはない。
 とりなす美鈴おばさんの言葉にも斎は無反応で、私は2週間もせずに音を上げて降参したのだ。

 斎の背中にしがみついて泣きながらいっぱい謝ってやっと許してもらい、その後、斎は私にすごく優しかった。

 その時に斎は私の世話を焼くことが意外と好きで、だから色々と聞いてしまうってことを聞いて以来、干渉されないよりずっといいからと、少しくらいうるさくても干渉を許してきた。

 でも、今回は本当のことを言うわけにはいかなかったし、私自身、嘘はあまり上手じゃない。
 下手な嘘をつくことは出来ず、その場ではごまかすしかなかった。

 そんなこともあって帰る前に少し買い物をしたかったし、早めに帰宅するつもりでシイナのバイトを待たず3時には駅に送ってもらった。

 真ん中誕生日のプレゼントは私がデジカメで撮ったたくさんの写真をフォトカードにしてプレゼントするつもりなのだ。
 斎ならきっと喜んでくれるだろう。

 喜んでくれた時の斎を思い出して、自然と嬉しくなってくる。
 
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