想 sougetu 月
 少しだけ最近の近状報告をしていると、いきなり変なことを言い出した。

『彼氏出来た?』
「ええっ? 彼氏なんていないよ。どうして?」
『だって突然一人暮らししたいなんて言い出だすから』
「ああ、ごめん、言うの忘れてたけど、やっぱりもう少しだけここにいたいから一人暮らしはやめる」
『あら、気の変わるのが早いわね』
「ごめんなさい」

 それからしばらく国際電話で話して幸せな気持ちで受話器を置く。
 斎を見ると、コーヒーのマグカップをテーブルに置いているところだった。

「今日プレゼントが届くんだって!」

 嬉しくて斎にそう言うと、斎は無表情で私のことを見た。

 いきなり無表情になってしまった斎に不安になる。

「斎、どうかした?」
「……彼氏なんていない? 俺の両親にも秘密。やっぱりお前の両親にも秘密か?」

 斎の低く冷たい声に体がびくりと反応した。

「それは……」
「それは?」
「……」

 どう説明したらわかってくれるのかわからなかった。

 斎は私との関係なんて全然気にしていない。
 許されない関係でも、家族の仲がすごくいい斎には家族に内緒なんて考えられないんだろう。

「……そう言えば、月子から好きだって言葉聞いたことないな?」
「そ、それは斎も一緒でしょ」
「俺が言わないから言わないのか?」
「そうじゃないけど……」

 斎が言わないとか関係なく、言えないのだ。
 だって言わないと決めたのだから……。
 
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