【砂漠の星に見る夢】

「申してみよ。情報しだいではチャンスを与えてもよい」


「はい、ピラミッド建造はどうやらネフェル様自身の細かい計算が必要とのことなのです」


「それで? それが何だというんですか?」


「は、はい。私が思うにはネフェル様はその細かな計算したものを書面に設計書として残すと思われます。もし、その設計書を手に入れることができたら、ピラミッド建造に大きなダメージを与えるものと思われます」


必死の形相でそう告げる刺客に、ヘレスは『くだらない』と鼻で嗤う。


「何を馬鹿なことを。その設計書を手に入れたところで、ネフェルはまた新たな設計書を作るであろう」


「いえ、設計書を手に入れて、私達がその設計書に無駄なものを書き加えて戻しておくのです。そうしたならピラミッド建造は失敗するものと思われます」


刺客がそこまで言うと、ヘレスは『ふむ』と頷き、にぃ、と口角を上げる。


「面白いではないか、やってみよ。
成功した暁にはなんでも褒美をとらすぞ。ただし、失敗したときには、分かっているだろうな」


「はっ」と刺客は深々と頭を下げる。


「もう行け、お前のような者に宮殿をうろつかれると足元をすくわれかねないからな」


ヘレスが手で払うような仕草をすると、刺客は焦った様子で素早く頭を下げ、そそくさと姿を消した。
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