猫が好き!


 もっと警戒した方がいい。
 簡単に人を信じるな。
 それは自分の事を言っていたのだ。

 あの子犬のように人懐こい笑顔に騙されて、まんまと信用した真純は、シンヤの目にはさぞや滑稽に見えた事だろう。

 真純の事を心配していたのも、好きだと言ったのも、絶対裏切らないと忠誠を誓ったのも、全部ウソ!
 ぼんやりと見つめていた、ひざの上の手が、視界の中で次第に滲んで歪んでいく。


「真純……」


 正面に座っていた瑞希が席を立って、真純の隣に座り直した。
 そっと真純を抱き寄せ、頭を撫でる。


「そんなにシンヤくんが好きだったの?」
「違う……」
「もう、素直じゃないんだから」


 口では否定しながらも、こんな時になって真純は自覚した。

 裏切られた事が腹立たしいと言うよりも、シンヤの言葉が全部ウソだった事が、こんなにも悲しい。

 それほどシンヤを、好きになっていたのだ。

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