身勝手な恋情【完結】

社長にそう言われれば、私は素直に「はい」とうなずいただろう。

勿論やり逃げなんて最低だけど……

情けないと思われるかもしれないけれど、ずっと憧れていた最高にいい男とヤれたからいいじゃない、と、自分を納得させることも出来たはずだ。

それに事務員という名の雑用係とはいえ、せっかく憧れの職場に入れたんだから、働き続けたい、という保身もある。


高槻蓮。超売れっ子のインテリアデザイナー。

一口にインテリアデザイナーと言っても、家具や内装、空間と色々あるけれど、高槻蓮の名前が一躍有名になったのは、数年前、オートクチュールブランド『シャルル・M』のブティックを手掛けたこと。

元々知る人と知るブランドだった(それでも富裕層には絶大な人気を誇っていたのは間違いない)シャルル・Mの店舗を手掛けたことでマスコミにもかなり取り上げられ、それまで無名だった彼のもとには依頼が殺到したという。

さらに彼の……フォトジェニックな容姿も手伝って、いわゆる経済ドキュメンタリー番組などでも何度も取り上げられた結果、押しも押されもせぬ若手インテリアデザイナーのトップに君臨するまでになった。



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