曖昧ショコラ【短】
カタカタと鳴るタイピング音と、淹れたばかりのコーヒーの香り。


それらに包まれた部屋には、相変わらず綺麗な顔をした男の姿。


「おい、塚本(ツカモト)」


「はい」


「あっち行ってろ」


「え……」


「お前がいると気が散る」


パソコンに視線を遣ったまま、淡々と告げられた指示。


夕食の支度をしていたあたしに『書斎に来い』と言ったのは、自分のくせに…。


「……わかりました」


ため息をついて、書斎を後にする。


絶大な人気を誇る小説家、篠原櫂(シノハラカイ)は、やっぱり今日も暴君だ――…。


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