愛罪



 母親がこの世を自ら去り、約二週間が過ぎた。



 特別、変わったことはない。

 一人の人間が亡くなって変わるのは、その人間の親類が嘆き悲しむことに徹する程度だ。

 ひとつの命が消えたというのに、何事もなかったかのように地球は廻る。

 消えるたびに止まられても困るけれど、いつもと同じく流れる雲を見ると、無性に虚しくなるのは何故だろう。



「お兄!見て見て!」



 瑠海の歓喜に満ちた声に、僕は現実へ引き戻された。

 ふと視線を落とすと、小さな手のひらに乗せたものを僕に見せる瑠海がいた。



「…四つ葉?」

「うん!凄い?」

「凄い凄い。よく見つけられたね」



 瑠海にせがまれて自宅の裏手にある児童公園にきたのは、三十分前。

 気持ちよく昼寝していた僕を馬乗りで起こした彼女は、悪戯っぽい笑顔で「公園に行きたい!」と目をこする僕を促した。



 象の鼻の形をした滑り台と、ところどころが錆びた赤いブランコ。

 レンガでふち取られた砂場があるだけの、シンプルかつ小さな公園だ。



 スカイブルーのベンチに座り、僕がぼうっと空を仰いでいる間に、瑠海は草むらから小ぶりな四つ葉のクローバーを見つけてきた。

 そのまま、僕の隣にちょこんと座る。



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