キモチの欠片
一途なキモチ~葵side~

俺のベッドでスヤスヤと気持ち良さそうに寝ているバカ女。

酔っぱらって自分で服を脱ぎ、挙げ句の果てに俺の服まで脱がそうとするなんて正直焦った。
結局、スラックスのベルトが上手く外せなくて諦めてそのままパタッと寝てしまったという最悪なオチ。

俺をその気にさせた責任をとれっつうの。
安心しきった顔で寝やがって。
思わずゆずの鼻を摘まむ。

「ぅ……」

苦しそうに眉間にシワを寄せるので起きるかと思い、手を離した。

が、また穏やかな顔して寝出した。
まったく、いつもコイツには振り回される。

河野柚音。
俺が昔から好きだった女。

親同士も仲が良く、幼馴染みでいつも一緒にいて、ゆずが俺の隣にいるのが当たり前だった。

それも思春期を迎え、自分の気持ちの変化に気付いた。
ゆずの服装や仕草が強烈に“女”を感じた。

今まで普通に接してたのに急に気恥ずかしくなり俺だけバカみたいに意識してゆずのことを避けてしまった。

そこから俺とゆずの長いすれ違いが始まるとは知らずに……。

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