キモチの欠片
「……ゆず、これはどういうつもりだ」
眉をピクピクさせて低くて不機嫌丸出しの声を出す。
それもそのはず、葵の唇があたしの唇に触れる寸前に手でガードしたから。
「どういうつもりってそれはこっちのセリフよ。こんなマンションの前でキスするバカなんていないでしょ。やめてよね」
憤慨して葵を睨む。
ホントに油断も隙もあったもんじゃない。
キスなんてしてるところをマンションの住人とかに見られたら恥ずかしくてここに住めなくなるし。
「じゃあバカになれよ。俺はゆずとキスがしてぇんだよ」
こ、この男はぁ~~~!
信じられない。
思わず拳に力が入る。
欲望に忠実過ぎて呆れるわ。
「もぅ、なに言ってんの。盛りのついた猫じゃあるまいし」
パシンと葵の腕を叩く。