椿ノ華



その言葉に葵の眉がぴくん、と吊り上がる。

はー、と大きな溜息を吐いてから、


「…帰るぞ椿。あの女の相手で疲れた」

「あ、はいっ」


椿の手を引き、
すたすたと歩き始める葵に着いて行く。


「またね、葵、椿さん」


その声に振り返ると、
壱が柔らかい笑みを浮かべてひらひらと手を振っていた。

小さくお辞儀をしながら、
葵の歩調に着いて行く為小走りになる。


「…手強そうだな」


壱のそんな呟きは、聞こえなかった。



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