スーツを着た悪魔【完結】

「デッ……デート?」



いつもどんなデートしてるのって……どうしよう。

なんて答えればいい?


焦ったまゆは、助けを求めるように隣の深青を見上げる。

するとまゆの視線を受けて、さらりと深青が答えた。



「――してない」

「ええー? 嘘でしょ!?」

「忙しいんだよ、あれこれ……」

「うわぁ……」



大げさに目を剥く未散。



「兄さん。出来る男は忙しいなんて決して口にしないものよ」



口元をナプキンでぬぐい、どこか憮然とした様子で未散は二人を見比べた。



「ちゃんとデートして、また次に会ったときに報告して」

「はあ!?」

「じゃないと兄さんが彼女を大事にしてないって、告げ口しちゃうから」


「――」



絶句する深青とまゆだったが――未散がいったん口にしたことを絶対に引っ込めない女だと言うことを一番わかっているのは、深青だ。



「約束よ」

「わかった……」



なんてことだ。また、未散のせいでとんでもないことになってしまった……。


深青は形のいい額を指で押さえ、ため息をついた。



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