スーツを着た悪魔【完結】

持っていた書類をデスクの上に放り投げた瞬間

「悪い、遅れた」

と、特に悪いと思っていなさそうな頼景が、ノックとともにオルランドの中に入ってきた。



「――!」



親友が女を膝に乗せているという衝撃的なシーンを見て、一瞬目を丸くする頼景だったが、見られた深青は特に気にはしていないようだ。


けれどごく普通の感覚を持つまゆは、どこからどう見てもエリートサラリーマンという雰囲気の頼景を見て、完全に血の気が引いてしまった。


この人が朝倉頼景さん……深青の親友……!



慌てて深青の膝から飛び降り、顔を真っ赤にしながらも、初対面の頼景にペコペコと頭を下げる。


なんて女だと思われただろう。
ああ、やっぱり膝になんか乗るんじゃなかった!


けれど深青に手を引かれ、優しく抱きしめられると、泣きたくなるほど幸せな気持ちになることは事実で――

いや、もう絶対、深青の部屋以外ではこういうことはしないようにしなければ!



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