薇姫/獣帝



『………』


一度もあの人をお父さん、と呼んだ事が無い。



あの人を父親だと、本気で思っていない。




昔から一緒に居たのは、父のあの人じゃなくて棗とか、組員ばかりだった。




でも、いつも裏から私の生活を支えていたのはあの人だったから。




恨みはしなかった。




ただ、




家族としてあの人を愛してはいなかった。




寝室に行き、真っ黒の布団に体を預ける。




活動は明後日から。



無理な日はしなくていい。



ただ、なるべくやる様に。





その約束事を言われた時、血が逆流しそうな程苛ついた。




ーーーー絶対、やってやる。




私の決心は誰にも悟られない様に、拳に力を込めるだけで自分に解らせた。




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