主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
翌日早朝、酒呑童子の居場所を見つけることができずに焦りを覚えていた晴明は、蝋燭の炎が大きく揺れたのを見てはっと顔を上げた。
幽玄町ないし平安町には、とてつもなく難解な結界を張ってある。
許可をした妖でなければ潜り込むこともできないほどのものなので、結界を攻撃されればすぐに気付く。
その結界を――何者かがとてつもなく巨大な力を振るって攻撃をしていた。
「空を打つような拍動…これは生半可な妖ではない。まさか…来たか…!?」
空気が揺れているのは、幽玄町側だ。
どおん、どおんと太鼓を打つような音は都全体に広がって、不安を覚えた住民たちが次々と外に出て来て空を見上げる。
素早く身支度を整えた晴明は、まず息吹の元へ行って安否を確認した。
式神に守られてすやすや眠っていた息吹を起こすのは忍びなかったが、今はそれどころではない。
ここに置いて行って安否を気にするよりも、傍に置いて守っていた方がいい――
「息吹、起きなさい。酒呑童子が椿姫を奪いにやって来た。そなたの案は間に合わなかったようだ」
「ぅ、ん……。……え…っ?父様…酒呑童子がここに!?」
最初は寝ぼけ眼だった息吹は晴明に事情を聞かされて瞳を見開くと、晴明に手を引いてもらって身体を起こすと大きく反響する太鼓のような音に天井を見上げる。
「空から音が…」
「私の結界を攻撃しているようだ。私はこれから幽玄町へ行く。十六夜たちも臨戦態勢に入っているだろうから加勢をしなければ。そなたもついて来なさい」
「……でも…私…主さまとは…」
「今はそのような些事を言っている場合ではない。十六夜の元が一番安全なのだよ。さあ、行こう」
――晴明の頭には真っ白な耳、そして真っ白でふかふかな尻尾が生えていた。
僅かな力でもため込んでおきたいという事情を知っている息吹は、唇を震わせながら浴衣を脱いで晴明に着替えを手伝ってもらった。
「私に何かできること…あると思う?」
「十六夜の傍に居なさい。あれが命を賭してそなたを守ってくれる」
「命なんて…!主さま……みんな……」
空を打つ拍動は、どんどん大きくなっていた。
幽玄町ないし平安町には、とてつもなく難解な結界を張ってある。
許可をした妖でなければ潜り込むこともできないほどのものなので、結界を攻撃されればすぐに気付く。
その結界を――何者かがとてつもなく巨大な力を振るって攻撃をしていた。
「空を打つような拍動…これは生半可な妖ではない。まさか…来たか…!?」
空気が揺れているのは、幽玄町側だ。
どおん、どおんと太鼓を打つような音は都全体に広がって、不安を覚えた住民たちが次々と外に出て来て空を見上げる。
素早く身支度を整えた晴明は、まず息吹の元へ行って安否を確認した。
式神に守られてすやすや眠っていた息吹を起こすのは忍びなかったが、今はそれどころではない。
ここに置いて行って安否を気にするよりも、傍に置いて守っていた方がいい――
「息吹、起きなさい。酒呑童子が椿姫を奪いにやって来た。そなたの案は間に合わなかったようだ」
「ぅ、ん……。……え…っ?父様…酒呑童子がここに!?」
最初は寝ぼけ眼だった息吹は晴明に事情を聞かされて瞳を見開くと、晴明に手を引いてもらって身体を起こすと大きく反響する太鼓のような音に天井を見上げる。
「空から音が…」
「私の結界を攻撃しているようだ。私はこれから幽玄町へ行く。十六夜たちも臨戦態勢に入っているだろうから加勢をしなければ。そなたもついて来なさい」
「……でも…私…主さまとは…」
「今はそのような些事を言っている場合ではない。十六夜の元が一番安全なのだよ。さあ、行こう」
――晴明の頭には真っ白な耳、そして真っ白でふかふかな尻尾が生えていた。
僅かな力でもため込んでおきたいという事情を知っている息吹は、唇を震わせながら浴衣を脱いで晴明に着替えを手伝ってもらった。
「私に何かできること…あると思う?」
「十六夜の傍に居なさい。あれが命を賭してそなたを守ってくれる」
「命なんて…!主さま……みんな……」
空を打つ拍動は、どんどん大きくなっていた。