Octave~届かない恋、重なる想い~
 だとしたら、あまりにも悲しい。

 私は目の前の人がずっと好きだった。
 もし、このプロポーズに「私」を好きだから、という言葉が少しでも含まれていたら、この迷いはなくなるのに。

 それが全くないまま結婚する。
 好きな人と結婚できても、その人からの好意は全て、私ではなく「私の家」へ向けられたものだなんて。

 こんなに残酷なプロポーズをされて、私は一体何て答えたらいいの?

 私の好きな人は、私を見ていない。

 だから私はこう答えるしかなかった。


「好きな人はいます。
でも、片思いのままです。そろそろ諦めようと思っていました。
だって、その人は私を見ようともしませんから……」

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