Octave~届かない恋、重なる想い~
 私生児、ということは、雅人さんのお母さんは、認知されないまま雅人さんを産み、シングルマザーとして育てたという事?

 そして、何かの事情で児童相談所に保護されて、ちしま学園へ入所したの?


「俺の父親だとされる男は、地元に結婚を約束した彼女がいたらしい。
 それを隠して母に近づいた。母にも当然打算的な面はあっただろう。
 上手くいけば医者の妻になれるのだから。
 ところが、俺を妊娠したと告げた途端、冷たくあしらわれて捨てられたそうだ」

「……」


 何といっていいかわからない私は、ただ黙って話を聞いているだけだった。


「そんな偽物の愛情の犠牲になったのが、俺って訳だ。
 俺は誰からも祝福されない子どもだった。
 父親からは認められず、母親からは疎まれて育った」
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