初恋シグナル~再会は恋の合図~


旅館に戻るバスに乗りながら、窓の外の移り変わる景色を眺めながら。


私の頭の中では、何度も何度も、彩織さんの話が繰り返し再生されていた。



彩織さんの話を聞いて、どうして辻村くんがあんなに変わってしまったのか、納得することができた満足感なんか少しもなくて。



……私の心を占めているのは、痛いほどの後悔だった。




意識するより先に、目尻からふわりと涙の雫が溢れてくる。



バスは丁度空いていて、いちばんうしろの席に座っていたこともあり、誰も私の涙に気付くことはなかったと思う。



……ぜんぶ、とけてしまえばいい。


痛みも、愛しさも、全部。



涙と一緒に、溶けて流れてしまえばいいのに────。




< 327 / 424 >

この作品をシェア

pagetop