それでも、愛していいですか。

「なんで、ここなのよ!」

「知るかよ!アパート決めてから、お前がここに住んでること、お前の母さんに聞いて初めて知ったんだから!ってか、携帯で話す必要ないから、切るな」

そう言うと孝太郎は容赦なく電話を切った。

「と、とりあえず、下行くから」

窓から叫ぶと、部屋着のまま階段を降りた。

「久しぶりだな……ってか、お前、頭ぼっさぼさだな」

孝太郎は、寝癖全開の奈緒の頭をわしゃわしゃと撫でた、というよりかき混ぜた。

「だって、休みだもん」

少しふてくされながら頭にある孝太郎の手を振り払う。

「来るんだったら、教えてくれればいいのに」

「メールしたじゃん。そっちに行くからたまには遊んでくれよなって」

そっちに行く、ってそういう意味だったのか。

「あんたって人は……」

奈緒が呆れているのをよそに、「俺、一階だから。よろしく」とだけ言い残し、孝太郎は引越し業者と一緒にさっさと新居へ入っていってしまった。

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