撮りとめた愛の色


私の漏らした呟きに彼は苦笑混じりに答える。


「私もそう思ったけれどね、新緑じゃなく若葉でも良かったか。まぁでもあの子達が頑張っているようだから変えはしないよ」

「そう」


四苦八苦しながらも筆を取る子供達を見つめる彼の目は酷く優しい。

彼のその柔らかい雰囲気こそ、オギハラ教室が纏う空気だと思う。ぬくもりが常に残っているような、居心地の良さがこの場所に、そして彼の傍にはあるのだ。


「せんせ」

「ん?」

「…ううん、何でもない。何言おうとしたのか忘れちゃった」


彼の傍は居心地がいい。けれど、こうして話している間すら彼のその穏やかな表情が私に向けられることはなかった。


「そうか。じゃあ思い出したら言っておくれ」


こんなに近くにいれるのに、それが少し寂しいと思うのは、おこがましいだろうか。


「……ええ、そうね」



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