撮りとめた愛の色
「子供達も帰ってしまったからね。時間も空いているし、出展のものを見るかと思って」
「え、いいの?」
頷いた彼は踵を返す。その背に続くように私も足を動かして隣に並べば、彼は腕を擦りながら少し眉根を寄せた。
「しかし春を過ぎたと言えど、夕方にもなればまだ少し肌寒いものだ」
「そりゃあ……。だってせんせ、いつも裸足じゃない」
「私はこれが部屋着だし、家の中だからね。中々廊下は冷たいが」
「別に良いと思うけれど、…というか外でも大半は和服が多いのではなかった?」
「まぁ…」
態《わざ》とめいて言えば、彼は苦笑を零し曖昧な返事をするから私は思わず笑ってしまった。
一概に外に出ると言っても、書道系やメディア関係の仕事と買い物やプライベートな事がある。
普段着が和服の彼は、仕事だと寧ろその方が雰囲気があるのでいい、等と和服でお願いされることが多く必然的にこっちの格好ばかりなのだ。