ライラックをあなたに…
『医』と付くだけあって、農大受験を両親は渋々承諾。
仕送りは最低限の学費と家賃のみ。
けれど、我が儘を言って通わせて貰えているのだから有難い。
だから、俺は『一浪』したのと同じで、今年6回生となる。
昨年、正式に『樹木医補』となった俺は、経験を積むべく、大学院で研究をしながら公共団体のボランティアをしている。
そして、今年、『樹木医』となる為の研修申請を控えている。
そんな俺が、法律に抵触するような真似をする筈が無い。
俺は立ち上がり、彼女のカップに手を添えて。
「ね?『体験』って事にすればいいし。俺、心配で1人にしておけないよ」
「………」
彼女は苦笑しながら、カップを差し出した。
顔を歪ませたところを見ると、自殺をするつもりだったのかもしれない。
俺はカップを片付け、彼女の服を乾燥機から取り出した。
「はい」
「………」
「1人じゃ着れない?……それとも、俺に手伝って欲しいとか?」
「なっ!!……そんなんじゃ」
「じゃあ、さっさと着替えてね~?」
俺は彼女を洗面所へと追いやって、出掛ける準備を始めた。