月夜の翡翠と貴方【番外集】


「…その相手が、ね………」


クランがそう呟いたとき、スジュナの前にロゼが立った。

スジュナは少し驚いたような顔をしたあと、おずおずと飲み物を差し出す。


…しかしその目は、ロゼの目をみていない。


その場にいる皆が、ふたりの光景を見守っている。

ロゼはその顔を不機嫌に染めて、スジュナを黙って見下ろしていた。

…その様子を見つめるクランの顔は、不安気な色をしている。

ジェイドの頭に、ひとつの可能性が巡った。

…ま、まさか。


ロゼはさらに眉を寄せると、次の瞬間、スジュナの手から荒々しく飲み物をとってしまった。


「!ロ…ロゼ!」

ラサバが「そんな態度、しなくていいじゃないか」と困ったように眉を下げる。

ロゼはそんなラサバを横目に、「ふん」とでもいいそうな顔で、スタスタと稽古場の奥へと去っていった。


< 113 / 455 >

この作品をシェア

pagetop