聴かせて、天辺の青
「でも、和田さんたちの部屋に入れても大丈夫? 何か変な気を起こすかもしれないよ?」
「まだそんなこと言うの? 大丈夫よ、しばらくは一緒に教えてあげたらいいと思うし、ね?」
おばちゃんが、にこっと笑った。
教えてあげる?
って、まさか私が?
「瑞香ちゃん、よろしくね」
混乱する私の背中を、おばちゃんがぽんっと叩く。
「え? やっぱり私?」
「うん、お願い。一応この近くでアルバイトを探した方がいいとは言ってあるけど、いつまで居るかわからないし、落ち着くまで……ね」
おばちゃんの言う『落ち着く』は、彼が東京に帰ることを指している。ただ、それがいつなのかはわからない。
わからない不安もあるけど、
「私の仕事がなくなっちゃうね」
という不安も大きい。
ふうと溜め息を吐いたら、
「瑞香ちゃんはご飯の準備だけでいいよ、今までずいぶん助けてくれたから少しぐらい楽してね」
と、おばちゃんは背中を優しく摩ってくれた。