弁護士先生と恋する事務員
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午後12時30分。
「イチゴ、貰って来ましたよ~♪」
昼休み、私は意気揚々とオフィスに戻ってきた。
安城先生は近くのそば屋に行ったけれど
柴田さんと剣淵先生はオフィスで昼ご飯を食べていた。
「イチゴ?それどうしたの?」
「吉田青果店のおじちゃんがくれたんです。
ハネ物だって言ってたけど、赤くてすごく美味しそうですよー!
今洗ってくるから待っててくださいね。」
私は流しに行ってイチゴを洗い、ガラスの小皿に盛りつけて二人に配った。
「練乳もあるから、かけたい人はかけてくださいね。」
「あら、私かけるわ。イチゴミルク美味しいのよね~♪」
柴田さんはたっぷりと練乳をかけてイチゴを頬張った。
「詩織、ヘタとって。」
応接用のソファーでコンビニ弁当を食べていた先生が、私に声をかけてきた。
「あっ、ヘタ切った方が良かったですね。ちょっとまっててください、今切ってきます。」
私がイチゴの小皿を一旦回収しようとすると、先生に腕をひっぱられ
ソファーに座らされてしまった。
「んな、わざわざ包丁で切らなくてもいいから手でむしって。
そんで、手、離せないから食わして。」
「えっ…」
お弁当を食べながら業界誌に目を通している先生に、隣に座ってあーんしろと言う。
(は、恥ずかしい事をぬけぬけと…)
「がはは!先生ったら詩織ちゃんに甘えちゃって。赤ちゃんみたいだわねー!」
柴田さんが大きな声でからかうから余計に恥ずかしくなってしまう。
「そー、俺赤ちゃんだから甘えるの大好き。詩織、早く食わせて。」
先生が二カッと笑いながら私をせっつくから、仕方なく手でヘタを取って先生の口にイチゴを運ぶ。
「あ…んむ。…ん、うまいね、このイチゴ。」
「ほんとほんと、甘いわよね。ほんとにハネ物なのかしらねー。」
のん気に感想を言い合っている二人とは対照的に、私の心臓はドキドキとうるさいくらい鳴っていた。
(ま……ったく先生ったら、こういう事を平気でやらせるんだから…)
自分の容姿がどれほどオトコマエなのか、ちゃんと解っているのかしら。
こんな事させたら、相手の女の子がどれほどドキドキするのか…
わかっててやってるのかしら。
「先生ばっかり食べさせてないで、詩織ちゃんも食べなよー。先生にあーんしてもらい。」
「えっ、何言ってるんですか、柴田さんっ!」
他人事だと思って、とんでもない事を言ってくれる!
今でさえ、こんなに心臓がバクバクしてるのに、食べさせてもらうなんて…
「詩織、あーんして。」
先生がイチゴを運び、口を開けろと急かす。
「ほら、俺が食わせてやるから、あーん。」
(手が離せないんじゃなかったのー!??)
もう、断る雰囲気でもなくなって
私は先生に甘~い瞳で見つめられながら
真っ赤なイチゴをほおばった。
フルーツのいい香りが立ちこめて…
それは、甘くて酸っぱい
初夏の味―――