弁護士先生と恋する事務員
「きゅ、きゅうこん~!???」
柴田さんと安城先生が、すっとんきょうな声でハモった。
「ああ。結婚してくれって言う、かな。」
「けっこんーーー!!」
また二人がハモる。
「す……素敵だわぁ!」
柴田さんが目をハートにしてうっとりしている。
「すっごく、いい話しじゃない!純愛よ、純愛っ。いま私胸がきゅーんとしてるっ。」
すっかり乙女になった柴田さんが両手を胸の前で組んで感動している。
「ケッ」
「………」
「………」
「あれ、今誰か『ケッ』って言わなかった?」
キョロキョロする柴田さん。
「俺も聞こえた… 安城か!?」
「いいえっ、僕、言ってないです!」
「それじゃあ…」
先生と柴田さんがゆっくりと私の顔を覗き込む。
「あ、あはは。私…かな?」
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「だって先生、よく考えてくださいよ。“S.S”さんはもしかしたら80歳のおばあちゃんかもしれないんですよ?それでもプロポーズするんですか?」
「愛に歳の差なんて関係ないだろ。」
先生が至極真面目な顔で即答する。
「イヤ、関係あるでしょさすがに…」
小声で呟いた安城先生をギロッと睨みつける先生。
「それにもしかしたら、人妻かもしれないですよ。そんな軽々しく求婚するなんて……」
「だったら、奪い取る。」
先生が目を細めてそんな事を言うもんだから、私の心臓はまたまたドキリと高鳴った。
「あらやだ!それじゃ不倫で先生が慰謝料とられる立場になっちゃうじゃないの。安城先生に弁護してもらっちゃったりして~」
がはは!と柴田さんが笑ったけど先生は真面目な顔を崩さない。
「ふ、ふうん。先生って意外とロマンチストだったんですね。」
私が負けじとからかうと
「いいか詩織、男はロマンチストなんだ。よーく覚えておけ。」
先生は私の鼻をぎゅうっとつまんで、そう言い放った。