恋愛ターミナル
TERMINAL2◆RIRI NOHARA


『それで……その、晃平さんと付き合うことに……』
「へー。それはおめでとう! あんまりうじうじしてると嫌われるから気を付けなよっ」


親友(亜美)の話を聞き終えると、【終了】をタップして、ソファに横になる。
90度まわって見えるカレンダーを眺めてぼそっと漏らした。


「……もうすぐ、9年目じゃん」


ソファに横たわって仰ぎ見る窓。
こんなに青空が広がって、天気のいい休日。

なのにどうして――――。


「今日も仕事なのよっ」


そう一人、部屋で叫んで、足元にあったメンズのスウェットを壁に思い切り投げた。


野原凛々(のはらりり)、26歳。
基本は土日祝が休みの幼稚園の先生って仕事をして、6年。

やりたい仕事だったし、すっごく疲れるけど充実してるし、とりあえず仕事に大きな不満はないんだけど……。

おもむろに立ち上がり、壁のコルクボードに近づいて行く。
右端にある、ちいさなプリクラを数センチという距離から、じっと見た。


「……若。これ、いくつん時だっけ」


その小さなシールの中で笑うのは私。
今よりもちょっと顔が丸くて、でもすごく幸せそうに笑ってる。

その隣に写る男。
悔しいけど、この数年前の容姿とほとんど今も変わらない顔をしてる、イイ男。
『イイ男』っていっても、ただ単に私の好みって意味で、世間一般にどうかはわからない。


「顔はやっぱり好きなんだけどなぁ」


まじまじと豆粒くらいの顔を見て、そのプリクラを指で軽くはじいた。

――不満があるのは、こっち。

高校が一緒で、3年生のときに他クラスなのに突然告白されて、付き合い始めた彼氏。

そいつは会田徹平(あいだてっぺい)。同じく26。

徹平はここ最近、仕事がなにやら忙しいらしい。
3年前から同棲もしてるのに、それでも一緒にいる時間がほとんどない。
ただ、同じ布団で眠るだけ。



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