東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「椿様…ご支度はお済ですか?」


私が赤子から世話してくれたばぁやの富士子さんが扉を叩き入って来た。



「ご支度は整っております…富士子さん」



「では…秋…下がって…広間のお手伝いをお願い」



「はい、かしこまりました…」


秋は富士子さんの指示で部屋を矢継ぎ早に出ていった。



「…富士子さん…私はお父様の元に行きますわ…」



「椿様はここでしばらく待機していてください」



「待機?」


私は富士子さんの言葉に神妙な心地を抱く。


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