狡猾な王子様
ポテトチップス、チョコレート、お煎餅、お饅頭、メロンソーダ。


昨夜に引き続き、手当たり次第にそれらを口に運んでいく。


「ふう、いくら何でも食べ過ぎよ」


「うん……」


お母さんに頷きながらも、お菓子を求める手は止まらない。


普段はこんな風にやけ食いをすることなんてないし、むしろスナック菓子のようなお菓子を食べる機会はほとんどなくて、食事の量も千佳子ちゃんや弥生ちゃんとあまり変わらない。


それでも、こうでもしていなければ頭の中が昨日のことでいっぱいになって、また泣いてしまいそうだったから……。


夕食が済んだ今、春ちゃん夫婦となっちゃん夫婦はそれぞれ離れに戻っていて、おじいちゃんとおばあちゃんも自室にいる。


お父さんはお風呂に入っていて、居間には私とお母さんと秋ちゃんしか残っていなかった。


「おい、ふう。ちょっと寄越せ」


「あっ……!」


言葉と同時にポテトチップスを口に運んだ秋ちゃんは、いつの間にか缶ビールを手にしていた。

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