アロマな君に恋をして

「あーあ、やっぱり汚い……」


眠る前、貰ったオイルで芳香浴をしようと思った私。

けれどポットの上部のオイルを垂らすための受け皿が、前回のオイルでべたつき、さらにはそこに埃が積もってこのままでは使い物にならなそうだった。


端から見たら、私もこんななのかな。埃だらけで、触りたくないような……


「…………」


……ダメだ、やめよう。暗くなってきた。

気を取り直して洗面所で受け皿を洗い、そこにお湯を張ってから貰った精油のうちのひとつをポタポタと垂らした。

部屋に戻って中のキャンドルに火をつけ、明かりを消す。


ぽうっと柔らかな光が浮かび上がり、甘い香りが漂い始める。


選んだのは、フルーティな柑橘系の香りが気分を明るくすると言われている、ベルガモットの精油。


「なんか、久しぶりだな……寝る前にこんな風にゆっくりするの」


ごろんとベッドに横になりながら、次第に部屋中に広がる香りに包まれていく。

元はと言えば、この感覚が好きで始めた仕事だったんだよね……

忘れかけていたそんな気持ちが、香りとともに蘇ってくるような気がした。


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