甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
「「はあ?」」


「なに言ってるんですか?」
「なに言ってんだよっ!」


またまた静かなティールームに
私とサトルの驚いた声が響いた。


「あの、お客様……
もう少しお静かにしていただ……」


「「貸し切りにしてくれっ」」


今度は坂下さんとサトルの声が響く……。
最早、周りにいた他のお客さんたちは、
一刻も早く、この見るからに
ややこしい状況から
退散しようとしているし……。











「その……お試しお試しって
私、まるで通販の化粧品みたい
じゃないですか……。」


私たちだけになったティールームに
また沈黙が流れる。


しかしーーー
はぁ……。
全くこの人たち一体なんなのよ。


すると、
その、沈黙をサトルが破った。


「坂下、兎に角、俺は今回の件、
身を引く気はないんだ。
確かに、見合いを断る口実を探している。
だけどな、こいつにも話したけど
誰でも言い訳じゃないんだ。
俺なりに理由(わけ)あってこいつを
選んでるんだ。だからーーー
お前にこいつを譲るわけには
いかねぇよ。」


うっ……。
そ、そんなストレートに……。
ちょっときゅんときちゃったかも。


「それ、何時の話ですか?」


と、坂下さんが聞き返す。


「いつ?って、確か……この前の
木曜の昼だ。」


「木曜日のお昼……、
なるほど、そうでしたか。
僕がアプローチしたときには
既にサトルさんとそういう話に
なっていたと……っでいいんだよね、
村崎さん?」


「あっ、はい…………。」


坂下さんが考え込んでしまって、
またまた無言の時が流れて行く。
そしてーーー


「分かりました。だけど僕の思いだって
昨日今日沸いた話じゃないんです。
ずっと、村崎さんのことを
真剣に思っていた。
だからーーーここはひとつ提案ですが」









坂下さんは、
とんでもないことを
提案した。


それはまるで
甘い餡がぎゅうっと
詰まっているくせに
実際は武士の魂である刀の
鍔(つば)を型どっていたという
驚きの話。
まるできんつばの様な話だった。







< 26 / 192 >

この作品をシェア

pagetop