【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
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駅に着いてタクシーを降りると

改札を抜けた私は

何も考えずに来た電車に飛び乗った。

どこに行くのかもわからず

ただ、ただ揺られた。

周囲の視線にも構う余裕もなく…。

いつのまにか終点になり

流されるように降りた私は

自宅アパートのある最寄り駅とは

全く逆方向になる駅に

着いていた事をやっと知った。

この駅はあまり来た事がない。

だけど、戻る気に今はなれない。

私は改札を出て

ぼんやりと出入り口のそばに立った。


外は当然真っ暗で、吐く息が白い。

コートを着ていても

寒さが体にしみてくる。

また涙が滲む。

泣き過ぎて顔がぐちゃぐちゃ。

頬も目も心も痛い。

それでも、なお流れる涙…。

慣れない道を急いで走ったせいか

足も疲労を感じ、若干ズキズキする。


持っていたバッグから

携帯のバイブが鳴っている。

相手はわかってる。

今は出る気になれない。

出たところでどうなるの?

あんな所を見たのに、聞いたのに。

どうしよう…。

自宅にこのまま帰る気にも

何となくなれない。


私のアパートを勿論知っている

満君達が来ないとも限らないから。


何時かもわからない。

いつのまにか

私の足は若干フラフラになりながら

ロータリーの方へと歩いていた。

さっきまで走っていた気力は

もう残っていないのに

当てもないのに進む足。

あまり来た事のない駅だから

当然、近くに何があるのか

どこに行きたいかなんてわからない。

視線の先に

スーパーが見えるのだけはわかる。

行く当てもないのに

頭の中とは裏腹に足は進んで行く。



その時だった。

すれ違う直前の誰かに突然

“ガシッ”と私は腕を掴まれた。

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