人知れず、夜泣き。


 「・・・・・・」

 「・・・・・・ッ!!」

 ビックリしすぎて、木内を弁当と間違ったらしい。

 うっかり木内の唇を食っていた。

 慌てて唇を離すと、木内も目を見開いて驚いていて、

 「・・・クリームコロッケの味がする」

 キスの感想が全く色気のないものだった。

 「・・・そうだね。 たった今食ったしね」

 動揺を隠すかのように、冷静を装う。

 「・・・次は何のお弁当が食べたいですか??」

 言うだけ言ってスッキリしたのか、木内はオレのドキドキを余所に普通に話出した。

 オイオイ、待て待て。

 「・・・ねぇ、さっきのキス、何だと思ってんの??」

 おかしいでしょうが。 

 この流れで次の弁当について話すの、おかしいでしょうが。

 「こっちが聞きたいよ。 何だったの!?」

 木内が顔を赤らめつつ、眉間に皺を寄せた。

 何だったの!?って何だよ。

 「『付き合いましょう』のキスに決まってるでしょうが!!」

 バカか、木内。
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