スイートナイト
静香もそうだけど、私も結婚している。

だけど静香は仕事で巽くんに会える機会があるかも知れない。

専業主婦の私はと言うと、
「会える訳がないよね…」

1人で呟いて、虚しくなった。

そうだよね…。

専業主婦の私が、ホストの巽くんに会える訳ないじゃない…。

私は優のためにつくさないといけないのだ。

朝は彼の好きな白いご飯を出して、仕事に行くところを見送って、夜はいつ帰ってくるのかわからない彼を家で待たないといけない。

友達と会っちゃいけない、遊びに行っちゃいけない、夜遅くに帰ってきちゃいけない。

1日の大半を、夫――優のためにささげないといけない。

「もう考えるのやめよう。

どうせ、もう会うことなんてないんだ」

私は自分自身に言い聞かせると、ソファーから立ちあがった。
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