ここに在らず。


「……」


絶対に怪しいと、私は用心深くその人の様子を窺う。私を助けてくれる人などいない環境で育った今、私にはしっかりとした防衛本能が育っていた。


まず、この人はいつもと言っていた。という事はどうだったとしても、初めてここへ訪れたという訳では無いのだろう。

でも、もともと他の人達を違う世界の人達というくらいの認識でしか見ていない私の記憶に、この人の姿が有る訳がない。という事は嘘をついてるかどうかも判断出来ない。

じゃあ、目的は?本当だとしても嘘だとしても、どちらにしろ私に声をかけるなんてここら辺の人はしない。本邸の人達に目をつけられたくないからだ。だとしたらこの人は他の所から来た人…なんで?わざわざ図書館のためにここへ?


「……」

「……」

「…あの、シカトですか?」


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