ヒールの折れたシンデレラ
そしてその地位と美貌で彼がものにしたのは“葉山ホールディングス始まって以来のプレイボーイ”の異名だった。

芸能人にモデル。はたまた医者に看護師。フライトアテンダントに保母さん。彼と浮名を流した人数を把握している人はいるだろうか?本人でさえ把握できていないのではないかと思う。

お見合いの話をふってみてものらりくらりと避ける。

千鶴が宗治について知っているのはこれぐらいだ。正直あまりいい印象などなかった。

「普通の子ってどういう意味ですか?」

「俺はまったく結婚する気がない。なのにあの三人のうちの誰かを秘書にでもしたら秘書課のバランスが崩れてしまうだろう」

「はあ……」

よくわからない持論をくりひろげている。

「彼女たちはいわゆる、お見合い相手としてこの会社に入社している。

下手なことして相手にも相手の家族にも期待されては困るからね。

だからそういうしがらみのない君を僕の秘書にしたんだ」

少なくとも常務付きの秘書になった理由はわかったが、秘書課のほかのメンバーのやっかみをかうことだけは決定した。

さっきの華子の鋭い視線を思い出して背筋が凍る。

(どうして結婚しないなんて言うんだろう……)

千鶴は聞いてみたい気もしたが、あまりにプライベートな内容になるので控えた。

そんな千鶴の様子をみて宗治が言った。

「まぁ、君に断る権利なんてないんだけどね。これは上司命令だから嫌でもしたがってもらおう」

そういって、シニカルな笑顔を一つ浮かべた。

すると宗治のスマホが着信をつげる。

「あぁ、美佐子ちゃん~久しぶりだねぇ」

何ともだらしない声をだして私用電話をしている目の前の男がこれから自分の上司になるのだ。

そして和子から言われた『一年以内に結婚させる』ターゲットだ。
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