ウソつきより愛をこめて

「わっ、結城(ゆうき)店長!いつから居たんですか…っ。ていうか、あの、今の話…」

噂の張本人である私が登場した途端に、バイトの大学生たちが興味深々の目を向けてくる。

「話って、なんのことかな?」

それを鉄壁の笑顔でブロックした。

「あ…い、いえ。なんでもないですっ!じゃあ私、これから一番もらいますねぇ」

焦って立ち去る彼女の背中を見つめながら、小さなため息をつく。

結城エリカ、二十三歳。

ゆるく巻かれた長い髪とガーリーな猫目メイク。

今日はケーブルニットのワンピースで足元はミドルヒールのショートブーティを身につけている。

見た目は甘めの可愛い格好をしているけど、中身は大雑把で掃除とか料理も苦手だし女らしさの欠片もない。

誰もが知っている外資系アパレルブランドの会社に入社して、今年でもう五年目。

もともとは東京の店舗で販売員をしていたけれど、二年前自ら志願して地元仙台の新店に異動し、半年前ようやく実績が認められて店長に昇格した。

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