偽装結婚の行方
第二章 彼女の事情
しかし、いくらなんでもこれはないよなあ。俺がいきなりパパになるなんてさあ。いくら話を合わせろって頼まれても、限度があるよな?

という事で、


「ちょっと待ってよ。この子が俺の子、っていうのは、違うんじゃないかと……」


と言ってみたのだが、


「尚美が違う男と作った子だと言うんですか!?」


すぐに尚美さんの母親から噛みつかれてしまい、


「うちの娘はそんなふしだらではない!」


と父親に怒鳴られ、


「失礼な事を言うんじゃない!」


と、親父さんからも怒鳴られた。そして、


「こんなに似てるのが、何よりの証拠でしょ?」


と、お袋さんが言い、それが“決定打”でもあるかのように、他のみんなも頷いた。そんなに似てるかなあ、と思いながらその赤ん坊の顔をじーっと見たが、うーん、確かに似てるかもだな。

もしかして、本当に俺の子どもなのかな。なんて、あるわけないけど。


「涼、ごめんね?」


尚美さんは再び俺に謝った。それはたぶん、『こんな事に付き合わせちゃって、ごめんなさい』という意味だろう。

まったくだよ。でも……

その尚美さんのすがるような、そして泣きそうな顔を見ていたら、もう、仕方ないかなと俺は思った。だから、


「俺こそごめん、変な事言って。この子は確かに俺の子どもだよ。うん」


って、言ってしまったんだ。これから先、大変な事になるとも知らずに……

< 11 / 122 >

この作品をシェア

pagetop