偽装結婚の行方
尚美に関し、どこまで喋るかを決めかねてる内に、阿部と昼飯を食う事になってしまった。ここは会社近くの定食屋で、阿部はカツ丼、俺はアジフライ定食を食っている。


「で、河内尚美はおまえにどんな用だったんだよ?」


阿部が万を辞してたかのようにそう切り出した。


「ん……その前に、彼女について教えてくれよ?」

「は? 何を?」

「つまり、どんな子だったのかだよ」

「おまえ、会ってないのか? 彼女と……」

「いや、会ったよ」

「会ったのか? へえー。だったら俺に聞くまでもないだろ?」

「いいや、会ったと言ってもほんの少しの時間だからさ、もっと情報が欲しいんだ」


という事、つまり尚美に関する情報をなるべく沢山仕入れたい、というのもあるが、そうやって時間を稼ぎたいというのもあった。時間があると、何もかも阿部に喋っちまいそうで……


「と言われてもなあ、特に親しかったわけじゃないから、大した情報は持ってないぜ?」

「いいんだよ、おまえの知る範囲で……」

「わかった。まず、彼女は……すげえ可愛い。おまえも会ったなら知ってるよな?」

「そ、そうだな。確かに……」

「うん。それから……って、なに赤い顔してんだよ?」

「えっ?」


しまった……、顔に出ちまったかあ。

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