偽装結婚の行方
家の前に2トントラックが停まっていて、その荷台に俺の荷物を載せていった。そのトラックの横にはなんとか電機とプリントしてあり、同じく伸一君が着ている作業衣にも刺繍がある。


「会社のトラック?」

「はい」

「そっか。悪いね?」

「別に。あんたのためじゃないし」

「え?」

「姉貴のためだから」

「ああ。そ、そうだよね。あはは……」


愛想笑い浮かべながら家の中に戻ろうとしたら、「中山さん」と伸一君に呼び止められた。

「ん?」と振り向くと、伸一君はジーっと俺の事を睨んでいた。


「あんた、姉貴の事、どう思ってんだよ?」

「どう、って……。す、好きだよ。もちろん。愛してるし」

「本当か?」

「ほ、本当さ」


伸一君に嘘がバレないように、俺はしっかりと彼の目を見返した。嘘と言っても、全部が嘘ではないと思うし。

そう。“尚美を好き”という部分だけは……嘘じゃないんだ。それを初めて自覚した内心の動揺を隠しつつ、俺は姉思いの青年を、真っ直ぐに見返すのだった。

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