極上エリートの甘美な溺愛


今日の約束は、結婚式の二次会の打ち合わせ。

宣伝部の同期の七瀬香里が来月結婚することになり、二次会の幹事を片桐設計事務所の同期三人と、香里の婚約者の会社の同期三人で引き受けた。

今日が、主役の二人を含めた幹事全員の初顔合わせの日。

結婚式の日も迫っているので、今晩一気に決めることになっているのだが、いつものごとく、玲華は定時に仕事は終わらずかなりの遅刻をしている。

「居酒屋の『堤』だよな。次の信号の角だから」

「はい。すみません。篠田さんはこのまま会社に戻って仕事なのに」

「まあな。まだまだ仕事が終わらない俺の代わりに楽しんできてくれ」

「……はい。すみません」

その後車は目的地の居酒屋の前に着き、玲華は助手席のドアを開け、拓人を振り返った。

「じゃ、お疲れ様でした。本当に助かりました」

早口でそう言って外に出ようとした時。

ふと、助手席の足元にピアスが落ちているのに気付いた。

パールの周りに小さなダイヤがあしらわれている可愛らしいデザイン。

街灯に照らされたピアスは、暗い車内でキラキラと異質な光を放っていた。

玲華は思わず手に取りそうになりながらも、拓人に気付かれないよう車から降りる時にちらりと見るにとどめておいた。

視線を車内に残したまま降りたせいで、なんだか体が妙な姿勢になった。

訝しげな視線を玲華に向ける拓人にごまかし笑いを浮かべる。

「お疲れ様でした。明日、朝一で今日の図面をおこしますね」

「ああ。午前中には欲しいから頼む。あ、楽しむのはいいが、飲みすぎるなよ」

「はーい」
 

拓人の車は、再び大通りを走り出した。

玲華は小さくなっていくテイルランプを見ながら

「あれは絶対、沙耶香のピアスだ。間違いない」

ぽつり、呟いた。






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