過保護な妖執事と同居しています!



 途端に胸がざわつく。清司は私の意思を尊重してくれるんじゃなかったの?
 咄嗟に先を行くザクロに視線を向けると、彼は振り向いて私に告げた。


「頼子、そこでお待ちください」


 そう言ってザクロはそのまま先へ行く。私は言われた通りに立ち止まった。

 清司とザクロは互いに何が始まるのかわかっているようだ。私だけなんだかわからず、辺りをゆっくりと見回した。

 ふとザクロの向かう先の地面に、水をまいたような跡があるのに気づく。水の軌跡は直径三メートルくらいの円を描いていた。そして清司の正面に当たる部分だけ線が繋がっていない。

 ザクロが円の中に入ったとき、清司が動いた。手にしたペットボトルの水を地面にまいて、途切れていた円を繋ぐ。その直後、地面に描かれた円が目映い光を発した。

 内側にザクロを閉じこめて、円から発した光は薄い膜のような壁を天に向かって立ち上らせる。

 私は慌てて、光の壁に駆け寄った。触れている感覚はないのに、壁に阻まれて手指の先すら内側に入ることができない。


「ちょっ、清司、なにこれ」
「あぁ、結界張った。普通は結界も結界の内部にも干渉できなくなるんだが、おまえはそいつと繋がってるから見えるみたいだな」


 えーと。そんな当たり前のように淡々と説明されてもついていけないんだけど。やっぱり清司ってそっち系の人なの? そして私はいわゆる超常現象を体験しているってことでいいんだろうか。

 いやまぁ、妖怪と普通に暮らしている時点で、十分超常現象なわけなんだけど。


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