ラストバージン

「でも、この間電話で『婚活パーティーに参加した』って言ってなかった？」

「職場の先輩に誘われて、二回参加しただけだよ」


菜摘はコーヒーカップを置いて、小さなため息をついた。


「『一緒に申し込むと安くなるから』って頼まれて付き合ったけど、先輩と一緒だと気を遣かってばかりで疲れちゃって……。だから、二回目は葵も誘ったけど、断られちゃったし」

「だって、結婚に前向きになれないのに、婚活なんて……」

「私もそう思ってたんだけどさ、婚活自体は意外と悪くないよ？　合コンよりは真剣な出会いもありそうだし、女性は無料だったり格安だったりでお得だし」

「結婚願望がないのに婚活パーティーに行くなんて、真剣な気持ちで来てる人達に失礼じゃない」

「葵は、真面目に考え過ぎよ」

「真面目って……。婚活って、そういう事でしょ？」

「別に、婚活パーティーに参加してる全員が『結婚相手を絶対に見付けるぞ！』って感じじゃないし、『出会いが全くないから参加してみた』って人も結構いるわよ。私を誘った先輩は前者だけど、私みたいに『知り合いに誘われて』って人もいたし」


菜摘はおもむろにコーヒーを飲んで、神妙な顔をした。