ラストバージン

* * *


「葵ちゃーん!」


部屋に足を踏み入れるなり飛び付いて来た、二つの体。


「あけましておめでとう!」


三ヶ月前に会った時よりも少しだけ成長したように見える二人の声に、自然と柔らかい笑みが零れる。


「あけましておめでとう」


ニコニコと笑う桃子と孝太は、私の両手をグイグイと引っ張ってテーブルへと促す。


「こらこら、そんなに引っ張ったら葵ちゃんが困るだろ」


苦笑する孝輔さんの言葉も聞かずに、姉弟揃って我先にと言わんばかりに学校や習い事での事を話し始めた。


「ごめんね、葵ちゃん。夜勤明けで疲れているのに……」

「いえ」


「楽しいですから」と笑えば、孝輔さんは申し訳なさそうにしながらも微笑んだ。


「葵、お昼まだよね? これから一緒に食べるでしょ?」

「あ、うん」

「桃子、孝太。テーブルのトランプ、お片付けしておいてね」


「はーい」


私を追い掛けるように居間に入って来た母は、キッチンにいるらしい姉の元へと行った。


父と孝輔さんは、早くも日本酒を飲み始めている。
実家に帰って来るのは億劫だったけれど、いざ来てみれば新年特有ののんびりとした雰囲気に肩の力が抜けた。

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